《MUMEI》

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廉はノートを抱えて、由紀の背中を睨みつけていたが、すぐに晃へ顔を向けると、キレイな笑顔を浮かべた。


「…それじゃ悪いけど、借りるね」


憧れのアイドルに声をかけられた晃は、ゆでダコのように顔を真っ赤にして、首を激しく横に振る。


「すきなだけどうぞ!!いつまででも構わないし!!」


早口でまくし立てる晃に、廉は黙って笑顔を返し、それからわたしの顔を見た。

笑顔のまま、彼は呟く。


「…これで終わったと思うなよ?」


脅すような口調に、背筋が凍った。

廉はわたしに背を向けて、自分の席に戻っていく。わたしはそれを目で追った。



………なんなの?

どういうつもり??



漠然とした不安を抱えているわたしの耳に、無機質な予鈴が、むなしく鳴り響いた。





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