《MUMEI》

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わたしがそう叫ぶと、由紀は、キッと眉を吊り上げて、



「放っとけるかよッ!!」



割れるような大声で、怒鳴った。


わたしはまた、口をつぐんだ。これ以上、なにかを言い返すことを許さない雰囲気を、由紀はその全身で醸し出していた。

彼は今度は抑えた抑揚で、続ける。


「放っとけねーよ…お前、隙ありすぎなんだもん。北條のことだって、どう転ぶかわからねーってのに、全然自覚ねーし」


そこまで呟いて間を置くと、心を鎮めるようにグッと拳を握りしめて、ゆっくり顔を俯かせた。

長い前髪がハラリ…と落ちて、彼の顔を隠す。


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