《MUMEI》 . 廉はわたしを後ろから抱きかかえたまま、由紀に向かってニッコリとほほ笑み、お取り込み中どうも〜、とおどけて見せた。 「お話のトコ悪いんだけど、ちょっと野暮用があるから、コイツ引き受けるね」 言い切るなり、廉は由紀の返事を聞かないまま、ものすごい力でわたしを引きずり始める。完璧にヘッドロックされているので、苦しくて抵抗も出来ない。 「離しなさいよっ!!このバカアイドル!!」 廉の腕の中で、ギャアギャア喚くのが精一杯だった。 わたしの声に、由紀がハッと我に返り、ちょっと待てよ!と大声を出した。 「まだ話が終わってないんだよッ!」 焦ったように追いかけようとする由紀に、廉はわたしを引きずりながら振り返ると、楽しそうに言った。 「さっきのノートの件、これでチャラにしてやるよ!」 じゃあね〜☆と、勝手に会話を切り上げて、ズルズルわたしを引きずった。 由紀は呆然としたまま、わたしと廉の姿を見つめて、そこに立ち尽くしていた。 ****** 前へ |次へ |
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