《MUMEI》

そこでクイナとは別れた。

彼女は本来ならば、私のような者とは縁が無い、普通の少女のハズだった。

十年前、彼女に犬神の知恵を誰かが与えなければ―。

十年前、あの神社に所用があって、私は行った。

ところがすでに先客がいた。

当時まだ6歳ぐらいだったクイナだ。

彼女はまだ幼いながらも、その目に憎しみの炎を宿していた。

そして土道の一部を、強く踏んでいた。

そこから湧き上がる黒い気配に、私はすぐに気付いた。

だから彼女の記憶を、犬神に関する記憶を消したハズ―だった。

しかし当時、まだ力の使い方を良く知らなかった私の力は次第に弱くなり、逆に犬神の力は増していった。

やがては封印を破り、クイナは犬神使いとなってしまった。

それが良いことなのか悪いことなのか…今の私には何とも言えない。

駅が見える所に来て、私はケータイで時間を見た。

…もう少しだけ、時間がある。

私は駅ビルの中の本屋に入ることにした。

適当に本を選び、出ようとしたところで声をかけられた。

「アレ? マカさん」

「マカさん、こんにちは」

「キシとアオイ。2人してこんな所でどうした?」

20歳のキシと11歳のアオイの組み合わせは珍しい。

…いつも彼女であるヒミカ、そしてルナがセットなのに。

「今日はお互いに恋人への贈り物を買いに来たんですよ。ここは流行最先端の物が多いですから」

「キシさんに車で連れて来てもらったんです。目的が同じですから」

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