《MUMEI》

「何もなければ、平穏・無事に過ごせるさ。そうなるよう、正月参りで祈って来い」

手をヒラヒラ振りながら、私はその場を去った。

そろそろ電車の時間だった。

電車に乗り込むと、これまた知った顔を見つけた。

「カルマ。久し振りだな」

「マカ! 珍しいですね、こんな所で会うなんて」

二つ年下で、高校1年生のカルマだ。

今時の男子高校生とは思えないぐらい、物腰が柔らかい。

「ちょっと私用でな。お前は?」

私はカルマの向かいの席に座った。

「ボクはこれから父さんと買い物と食事です。午後から仕事が休みになったそうなので」

「お前んとこの父親は、相変わらず親バカだな」

「返す言葉がありません」

そう言って苦笑するも、カルマは分かっている。

父親が自分を溺愛する理由を。

「どこまで行くんだ?」

「えっと…。まだ20分は電車に乗っていますね」

「私は地元に帰るから、40分だ。その間、話相手を頼む」

「喜んで」

カルマが話し相手になってくれたおかげで、20分は楽しく過ごせた。

残りの20分はケータイでメールの返信をしていた。

年末だからか、メールの件数があっという間に2ケタになる。

手を振りながら、二度目の帰還。

ソウマの家に向かう途中、どうも怪しいモノ達が目に付いた。

以前、ハズミとマミヤが使いに出た時に見かけたモノだろうが…まあまだ無害だ。

私には。

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