《MUMEI》

いろいろな意味で痛む頭を抱えながら、更に悩む。

…そもそも何でアイツにキスされる?

女ッタラシで有名なアイツにソッチの気があったなんて…未だに信じられん。

でも…唇には昨日の感触が残っている。

アイツの味も…。

…ぐあっ! ダメだ! 感化されてる!

もしかしたらイタズラだったのかもしれない!

考えたくはないが、どっかの誰かと組んでふざけただけかもしれない!

いや、きっとそうに違いない!

そうと思いたいっ!

オレは思い余って、立ち上がった。

「わりぃ、授業サボる」

近くにいた友人にそう言って、オレは教室を出た。

…このまま近くにいたら、ずっとオレがアイツを見ていることを知られそうだったから。

気付かれたくは、ない。

まるで昨日のアイツが言った通りになってしまったようで…。

いっいやっ! 好きではない! そういう意味じゃなくて!

「はあ…」

とりあえず、落ち着ける場所に行こう…。

中庭は広くて、木も多いから落ち着くだろう。

オレはそのまま中庭に出た。

教室の窓からは見えない所まで移動して、草むらにねっころがった。

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