《MUMEI》 「だから何の嫌がらせだっ!」 「…人の愛の告白を、そんなふうに言わなくても…」 愛の? …告白? ……昨日のが? 「ふざけるなよ。あんなの挑戦状としか受け取れねぇよ」 一息に言った。 「挑戦状…。ああ、確かにそうかも」 オレの片手を掴んだまま、もう片方の手はオレのアゴを掴んだ。 「オレを惚れさせるって挑戦状。うん、この方がしっくりくる」 そう言って甘いマスクで笑う。 不覚にも、心臓が高鳴る。 「だれがっ、お前なんかっ…!」 「うん、今は夢中でいい。そのうち、好きだって自覚させるから」 不意に真面目な顔になる。 …卑怯だ。普段なら絶対に見せないような顔を、オレに見せるなんて。 「お前なんて…」 「うん」 近付いてくる唇を、避けられない。 「…好き」 になんかならない。 ―言えなかった。 アイツの熱い唇で、言葉を封じられてしまったから。 そう、好きになんてならない。 今はただ…コイツのことで頭がいっぱいなだけだ。 前へ |
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