《MUMEI》
拷問
仙春美は、夏希のおなかを軽く触った。
「あなた、いい体してるわね」
「何言ってるんですか」夏希はなるべく友好的な表情で話した。
「私だって、あなたくらいの年齢のときは、良かったのよ」
「春美さんは今でも綺麗ですよ」
「嬉しいこと言ってくれるじゃない。あなたは優しい子ね。でもあの女は私を侮辱した」
夏希は緊張した。唇を噛んで仙春美の表情の変化を見る。
「夏希チャン。あの女は何て名前?」
「…美果です」
「ミカって言うんだ。じゃあ夏希チャン。ミカをここへ呼んで」
「え?」夏希は慌てた。
「呼びなさい」春美が怖い笑顔で迫る。
「呼んでどうするんですか?」
夏希が聞くと、春美は覆面男たちに言った。
「おまえたち。この子の下着。剥がしちゃっていいわよ」
夏希は目を丸くして身をよじった。
「待ってください、待ってください!」
「じゃあ呼ぶ?」
夏希の額に汗が滲む。仲間を売れるわけがない。しかし言うことを聞かないと裸にされてしまう。
「春美さん。お願いですから、あたしの話も聞いてください」
「もちろん聞くわよ」
夏希は、覆面男たちの動きに注意しながら話した。
「彼女を呼んだら、拷問するんですか?」
「謝ったら許してあげるわ」
「本当ですか?」
「本当よ」
本当だろうか。夏希は考えた。美果をここに呼ぶのは、あまりにも危険ではないか。
「夏希チャン。自分が絶体絶命のピンチなのに、友達のことを心配するなんて、さすがはスーパーヒロインね」
そう言うと、春美が笑顔で合図する。覆面男たちが動いた。
「え?」
再び16本の手が夏希の体を襲う。
「あああ、待って…きゃははははは、あははは、あは、あはははは、やははははは…」
夏希は真っ赤な顔でもがいた。口を開け、両目をきつく閉じ、泣き顔で声を振り絞る。
「やめて…やめて…」
やめてくれた。
「はあ、はあ、はあ…」
「夏希チャン。やめてってことは、呼ぶってことよね?」
情けないが拷問に耐える自信はなかった。
「呼びます。でも一つだけ約束してください」
「一応聞こうか」
「彼女が素直に謝ったら、和解をしてくれますか?」
「ちゃんと謝ったらね」
夏希は力なく横を向き、目を閉じた。悔しいけど逆らえない。美果も自分も、無傷で助かる方法を考えるしかない。
「……」

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