《MUMEI》

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わたしは顔をあげ、間に合うの?と尋ねると、廉は、ダッシュで行く、と早口で答えた。


「伊達さんに連絡して、車回してもらう!」


言うなり、彼はポケットから携帯を取り出していじり始める。

わたしはその様子を眺めて、忙しいねぇ…と、他人事のように呟いた。


「午前中も仕事だったんでしょ?一日、何時間働いてんのよ?」


わたしの問い掛けに、廉は電話をかけることに必死なのか携帯を耳にあてて、覚えてない、とテキトーに答えた。そんな廉に、わたしはすっかり呆れてしまう。


「そんなに忙しくて、イヤになんないの?仕事ばっかで、プライベートもなにもないじゃん」


ため息まじりに尋ねると、廉は、は?と眉をひそめたが、ちょうど電話が繋がったようで、クルリとわたしに背を向ける。


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