《MUMEI》
それにこの業界は同性愛に寛容なところもあるし、意外とあちこちで聞く話でもある。
ただ、完全なノーマルだと思われていた伊藤さんが同性愛に走り、しかもかなり歳の離れた裕斗とそんな関係になっている事実は団員からすると青天のへきれきだった。
まあ、気を使ったのは始めだけで今じゃ皆に冷やかされているというか、完全に認められている。
だって…
「秀幸!面白いお菓子見つけたから裕斗君にあげて!」
「あ?納豆煎餅か、あいつ喜ぶよ」
伊藤さんは嬉しそうに共演者である瀬永恭輔さんからそれを受け取った。
「あー全く羨ましい、あんだけ美人だったら男も女もねーよなあ、は〜、裕斗君今度はいつ舞台見にくんだよ」
伊藤さんの肩を揉みながら瀬永さんは言う。
瀬永さんは伊藤さんが劇団『太陽』を立ち上げた時からの古株で、伊藤さんより4歳年下だ。
太陽一のイケメンで身長も高く、瀬永さんも映画やドラマにと活躍する一流の俳優だったりする。
瀬永さんも、演目によってはスケジュールを開けて舞台を優先する。
演じる事の原点は舞台なんだと伊藤さんと熱く語る、熱い人。
この人も俺にとって尊敬する人の一人だったりする。
「もう多分来ないってよ!てか俺に会いに来てたんじゃねーで加藤君に会いに来てたんだからよ、はー右っ側スゲーきく、ああ気持ちがいい」
「あー俺にも会いに来てくんねーかなあ、あのオレンジアイズ吸い込まれそうでたまんねーよなあ」
「馬鹿か、誰がテメーに会いにくっか」
「もーなんで秀なんだ、悔しいなあもう」
「「アハハハ」」
公演も半分終わり、今日の一日の休みを挟んで明日からまた公演が始まる。
今日は前半の反省点を解決させるまで皆帰さないと伊藤さんは言っていた。
今日も一日長そうだ。
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