《MUMEI》 美味いココアとクッキーを味わっている途中で、気付いた。 「あっ、そうだ。頼まれた物、持って来たぞ」 バッグから鏡を取り出し、ソウマに見せる。 「ああ、待っていましたよ」 ソウマは早足で近付き、鏡を受け取った。 そして角度を変え、真剣に鏡を見つめる。 「―はい、確かに。お礼は後程ということで」 「ああ。奮発してやれよ。主はコレを作った後、疲れて眠ってしまったようだからな」 「分かりました」 ソウマは鏡を持って、店の奥へ行った。 するとハズミが近寄ってきた。 「アレ、ウチの新作?」 「いや。ソウマ個人の頼み物だ」 「へぇ、珍しいな。でもマカが取りに行ったんだ」 「私でなきゃ、取りに行けない所だったんだ」 「へ〜。マカも大変だなぁ」 「ちゃんと礼は貰うから良いのさ」 そして肩を竦める。 しかしソウマは険しい表情で、店内に戻って来た。 「マカ、ちょっと良いですか?」 いつも柔和な態度しか取らないソウマにしては、珍しく少し焦っている。 私はハズミと視線を合わせ、すぐさま立ち上がった。 「どうした?」 するとソウマは奥の方へ手招きした。 ハズミとマミヤに聞かれたくない話ということか…。 「今、連絡が入りましてね。とある地域で、『力』を持つ人間が突如行方不明になっているそうです」 「何だと?」 あくまでも小声で、問い返す。 前へ |次へ |
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