《MUMEI》

私が声をかけると、村人はぎょっとした。

「あっアンタは?」

「この村でつい最近、2人の若者が消えたと聞いてな。詳しいことを知りたい」

村人は目を大きく見開いた。

そして挙動不審げに首を回す。

「…ああ、安心しろ。私は警察じゃない」

ぴたっと村人の首の動きが止まった。

この村は匂うからな。

いや、このウサギもだな。

血と死臭の匂いが、村やウサギから溢れ出ている。

恐らく何人かの人間が、食い殺されたんだろう。

だが私の関わることではない。

「私はただ単に、消えた時のことを知りたいだけだ。この村に深入りする気は無い」

それでも村人は口を開こうとしない。


「どうしました?」

村の奥から、美青年が出てきた。

私を見ると、軽く頭を下げる。

青年に村人は小声で話しかけた。

すると僅かに青年の表情に陰りが差す。

「あの2人のことを…。そうですか。僕からご説明しましょう」

青年はそう言って、近付いてきた。

「とりあえず場所を変えませんか? ここではちょっと…」

「ああ、構わん」

私は青年に連れられ、村はずれの湖に来た。

「…消えた二人は僕の友達でした。でも…」

「消えた二人に特別な力があった、だろう?」

先に言うと、青年の目が丸くなった。

「よくご存知で…」

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