《MUMEI》 . そのまま車は、テレビ局の地下駐車場へ向かい、そこに駐車すると、伊達さんはシートベルトを外しながら廉を振り返る。 「時間がないから、急ぎましょう!」 言い切るなり、彼女はいち早く車から降りる。慌てふためく伊達さんを見て、廉は舌打ちをした。 「…伊達さんが慌てても、しかたねーのに」 俺の撮影なんだから…と呆れたようにぼやき、面倒臭そうに車のドアを開けた。 廉に続いて、わたしも車から降りると、伊達さんがすかさずドアを閉め、ロックをかける。 彼女は腕時計を見ながら、険しい表情を浮かべた。 「プロデューサーにお会い出来るかしら…」 独り言をブツブツ呟きながら、彼女は早足でテレビ局の入口へと向かう。伊達さんのピリピリした雰囲気に、廉は慣れているのか、鼻歌まじりに彼女のあとをついて歩く。 わたしは、戸惑いながら、とにかく、彼らの後ろを追いかけた。 ****** 前へ |次へ |
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