《MUMEI》

裕斗は俺が長年愛用している小さなハサミを持ち、普段滅多な事じゃ見せない真剣な顔で鼻毛を切りだした。


俺はおっかなくて意味もなく目をつぶる。
ほら。他人に刺さった刺抜いて貰う感じっつーのか?
信用してねー訳じゃねーが、やっぱ怖いじゃん。

ジョキリなんて穴の中で音がする。

「なんで秀幸は鼻毛が飛び出すんだろ〜ね?」

「この年になっと色々あるんだ、俺だってお前の年の頃は出てなんかこなかったよ」

「ふーん、じゃあさあ佐伯さんも鼻毛切ってんの?」

「そりゃ〜切ってんだろ?もしかしたら俺なんかよりボウボウでぐりぐりかもしんねーぞ?」

「ぐりぐりって意味わかんねー…」

佐伯すまん。お前は鼻毛出てなかったよな、切った事ねーって言ってたよな。

許せ、このままじゃ俺がかっこ悪すぎる。

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