《MUMEI》
とりあえず、飯
食堂には、結構ヒトが居る。
「席・・空いてないかな?」
食堂の奥へと進むごま。
食堂にはお茶だけでなくコーヒーなども無料で飲めるようになっているため、雑談の場としても良く利用されている。ココの守護騎士達は仲間意識が強く、休憩時間には仲間と話すために食堂を訪れるものも多い。
「ごま副長〜お疲れ様!何でもクリエイトフィールド壊したんだって?」
騎士達が声をかけてくるのにごまは困ったようにオロオロと答えている。
空いている席に座って、メニューを眺めているごまだが、周りに次々とヒトがやってきては、適当な雑談をしている。その横でボンカーは女性騎士を見つけては声をかけまくっている。
「勇猛可憐な騎士様・・俺のことも守ってはくれませんか?」
何処からとも無く花を取り出し、差し出すが・・
「ふふ、こわ〜い旦那が後ろで睨んでるもの、辞めとくわ。」
「残念、5年若返っておいで〜」
などなど・・
簡単にあしらわれてる。
琴は琴で、騎士達と世間話に興じている。
(ふぅ〜・・なんか安心できる所だな。みんな明るくて良いヒトばっかりだし・・)
紅茶を片手に、のんびりと飲む狩月。
狩月にも何人かの騎士が質問をして話はしているが、おとなしく聞き役に回っている。
そんな中、視線の端に、まったくヒトの寄り付かない空間がある。
一人窓際の席に座り本を読んでいるハンディング。
フードを被っているため、顔は良く見えない上、読んでいる本があまりにも難解そうなものであるため誰も声をかけられないようだった。
すみません、そう一言断って、ハンディングの席へ移動する狩月。
「ハンド、何読んでるの?」
向かいの席に座り声をかけるが反応が無い。
(彩詩さんと同じで周りが見えてないのかな・・?)
「・・・なにやら失礼な事を考えているのではあるまいな?」
自分の考えに小さく笑みを零したのに気が付いたのか、ハンディングがこちらを見ている。
「そんなこと無い。普通の考え事。」
しばらくこちらを凝視した後、視線を本へと戻すハンディング。
「魔導書、そう呼ばれる類の本だ。」
本を読みながらこちらの問いに答えるハンディング。
「・・・そうなんだ。年代モノっぽいけど。」
本を覗き込みながら再び問いかける。
「・・・・・」
パタン。
本を閉じると視線を狩月へと向ける。
「400年ほど前、魔導王シレントリアス時代に書かれた物だ。この時代の魔導書は質が良いので我は気に入っている。」
「400年・・それってすごく高価なものなんじゃ・・」
「ふむ・・どうなのであろうな、売りに出したことは無いので解らぬが・・この時代の魔導書は意思を持っていてな、魔導書に認めさせねば手に持つことすら叶わぬ。それゆえ、買い手など無いと思うが・・」
そこで説明を終わらせ、席を立つハンディング。
「狩ノ月、すまぬが我はこれで失礼する。」
そう言うと、食堂を出て行くハンディング。
一人取り残された形の狩月。そこにボンカーが寄ってきた。
「一体どうやってあんなミステリアス美人と仲良くなったんだ!教えろ〜〜」
ミステリアス美人、恐らくハンディングの事を言っているのだろう。
「普通に会話してただけだろ!お前みたいに訳のわからないこと言わなかったら普通に会話できるって!!」
羽交い絞めにされている狩月がもがきながら答える。
「はぁ・・なんであいつらの知り合いなんかになったんだろ・・」
琴が呟いたが、周囲の騒がしさに誰も気が付かなかった。
それからしばらく、食堂で騒いだ後、バンプに噴水まで送られ琴、想花、ボンカーはそれぞれの家へと帰って行った。

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