《MUMEI》
侮辱の言葉
仙春美は、本題に入った。
「さてと。まずは、あなたに謝ってもらおうかしら」
美果は冷静に男たちを見回した。仙春美が命令したら最後、この覆面軍団に裸にされ、大切な体を好きにされてしまう。
それは絶対に避けたかった。
「ごめんなさい」
「ちゃんと謝りなさい」春美が迫る。
美果は神妙な顔をすると、仙春美を見つめた。
「申し訳ありませんでした。許してください」
春美は怪しい笑顔で美果を見下ろす。
「それは何に対して謝っているの?」
「え?」美果は一瞬迷う。「あ、ですから、海水浴場で恥をかかせたことを」
「それはもういいのよ」
春美の返答に、美果は驚いた。
「あなただって水着を賭けたんだから。もしも負けたら大衆の面前で裸を晒していたわよ」
美果は慎重に春美の話を聞いた。
「そういうリスクを背負って真剣勝負をしたんだから。そしてあなたは勝った。何の問題もないわ」
「では、何を怒っているんですか?」
春美は笑みを浮かべると、美果のおなかに手を乗せた。それだけでも十分怖い。
「思い出せないの。私を侮辱しておいて」
「侮辱?」
「その侮辱の言葉を取り消して謝ったら許してあげる。思い出せなきゃ、あなたの体を弄ぶことになるわ」
冗談ではない。美果は慌てた。弄ばれてたまるものか…。
しかし思い出せない。美果はあの日のことを思い浮かべたが、侮辱した覚えがない。
「思い出せないの?」春美は嫌らしい手つきで美果の内股を触る。
「ちょっと、やめてください」
美果は、仙春美の手から逃れようと腰をくねらせる。春美は全くやめる気配はない。
「そうよねえ。言ったほうは忘れちゃうのよねえ。でも言われたほうは一生忘れないわよ」
「あっ…」
春美はショーツの上から敏感なところをまさぐる。容赦ない。
「やめてください」
「なら、侮辱の言葉を思い出しなさい」
美果は一生懸命考えたが、春美の手が気になって何も思い出せない。
美果のおなかや脚を触りまくる春美を、男たちは羨ましがっている。
「おまえたち。準備しなさい」
「待ってました」
「うっひょい!」
覆面男たちが慌ただしく動いた。一人が大きめの缶を抱えて美果の横に立った。
「何?」美果は不安な顔で男を見る。
「ボス。パンツ脱がしていい?」
美果はドキッとした。
「ダメ。下着の上からよ」春美が笑う。
「普通は、じかでしょう?」
「菌でも感染したらかわいそうでしょ」
こんなやりとり。さすがの美果も恐怖を感じた。
「あたしに何をするつもり?」
「今にわかるわ?」
男が缶の中にハケを入れると、黄色い液体を美果のショーツに塗りたくった。
「ちょっと、何やってんの!」美果は真っ赤な顔をして怒鳴った。
部屋のドアが開く。さっきの黒い獰猛な犬がゆっくりと入ってきた。ちょうど美果は脚を犬に向けている感じだ。この位置は怖い。
「ちょっと待ってください。お願いだから」美果の額に汗が滲む。
仙春美はあっさり言った。
「あのワンくん。バターが好きなの」
「!」
美果は蒼白になった。
「ちょっと待って」
「待ってほしかったら侮辱の言葉を思い出しなさい」
「そんな…」
美果は本気で慌てた。犬を見つめながら、侮辱の言葉を思い出そうとするが、思い出せない。
(嘘…どうしよう?)

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫