《MUMEI》 楽屋訪問. 廊下の壁に続く、幾つものドアのまえを通りすぎて、 廉は急に立ち止まる。わたしも、彼に合わせるように足を止めた。 目の前には、赤い、大きな扉。 その脇には、『楽屋115』というプレートと、『LE FOU様』とプリントされた紙が貼り出されていた。 ………ここか。 わたしは、ぼんやりその扉を見つめた。 廉は扉を数回ノックする。コンコン、という軽やかな音が響くと、扉の向こう側から、どうぞ、と気のない男の声が聞こえてきた。 その声に答えず、廉は扉を勢いよく開ける。 「おはようゴザイマス」 テキトーな挨拶を述べながら、廉は臆することなく楽屋の中に入っていった。わたしは今さらながら、中に入っていいのか躊躇い、開かれたドアのところから中をこっそり覗き込む。 . 前へ |次へ |
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