《MUMEI》

「うん、だから…」

いきなりアイツの顔が間近に迫ってきた。

逃げるヒマも無く…、

チュッ

…キスされてしまった。

「えっ…」

「あっ、大声はナシ」

「むぐっ」

続いて口を塞がれた。

「…そのまま聞いてて。もしかして僕のこと、忘れられなかった?」

訪ねられても答えられないので、とりあえず…首を縦に振った。

「じゃあ…キスして、イヤだった?」

イヤ…では無かったので、首を横に振る。

「フフッ。キミって素直だよね」

そう言って笑うが…どう見ても、「単純だ」と言われている気がしてならない。

罰が悪くなり、オレはアイツの手を握って、口元から離した。

「…言いたいことはそれだけ? なら金輪際、オレに関わらないでほしい」

きっぱり言うと、アイツの目が大きく見開いた。

「悪いけど、オレは男を恋愛対象に思わないし、考えられない。だけどお前の行動をどうこう言うつもりも無いよ。人それぞれだし」

恋愛のことに口をはさむ権利なんて、誰にも無い。

結局、自分自身が満足していれば、周りからどう言われたって幸福を感じるものだ。

だから…オレは何も関与しないことを決めた。

「ただ学校で派手な動きをするのはやめたら? みっともないと思う」

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