《MUMEI》
禁断のバター犬!
美果は、地球人の思考を疑った。
どうしてこんな残酷な発想が思い浮かぶのか。しかも手足を拘束されて無抵抗だから、犬に舐められてもされるがままだ。
美果は犬から目が離せない。両手両足に力を入れた。無理だ。自力ではとても外せない。
悔しいが自分の運命は仙春美に握られている。
「待ってください。犬だけは許してください」
「だからあ。侮辱の言葉を撤回して謝ったら、許してあげるって言ってるでしょう」
勝ち誇った笑顔。卑怯だ。両手両足を縛られたら逆らえないのを百も承知で、意地悪を言う。
犬がゆっくり近づいて来る。美果は涙目でもがいた。
「お願いです。これだけは勘弁してください」
必死に哀願する弱気な美果を見て、男たちはエキサイトした。
「マッパのほうがもっと興奮できるんだけどな」
心ないことを口にする男を、美果は睨んだ。だがそれどころではない。仙春美が言った。
「10数えるわ。侮辱の言葉を思い出せなきゃ、攻撃命令を出すわよん」
「待ってください!」
「10、9、8、7、6…」
「ちょっと待って!」
「5、4、3、2、1。はいアウト!」
美果はもがいた。男たちは犬と美果を交互に見る。
口笛。と同時に黒豹のような犬が、美果のショーツめがけて走る。
「待って、待って、待って、きゃあ!」
あり得ない。犬は容赦なく美果の秘部を襲う。まさか人間界に来てこんな仕打ちをされるとは。
美果は歯を食いしばり、顔を左右に振った。
「やめて、屈辱…」
「私が味わった屈辱はこんなもんじゃないわよ」
美果は腰を動かして犬の舌から逃れようとしたが、無駄な抵抗だ。
「そんなに腰動かしたらカミカミされちゃうわよん」
美果は慌てて腰を動かすのをやめた。傷つけられたら大変だ。
「さあ、言葉を思い出さなきゃ延々このままよ」
「嘘でしょ」
助かる方法はそれしかない。しかし侮辱の言葉がどうしても思い出せない。
「痛い!」
美果は真っ赤な顔をして叫んだ。
「咬んでる咬んでる、助けて!」
「本気で咬まれる前に思い出しなさい」
(悔しい!)
魔法を使えれば何でもないことが、生身の体ではどうすることもできない。
「やめて、あなたも女ならわかるでしょう!」
「わかんないわ。美果チャンや夏希チャンと違って、私が悶えるところを見たいって男はいないんでしょ?」
「何を言ってる…あっ!」
思い出した。侮辱の言葉。
『この人の裸が見たいって人はいないだろうけど…』
美果は弱気な表情で仙春美を見つめた。
「ごめんなさい、あの言葉は取り消します」
「ほほほほほ」
憎悪に満ちた目で変な笑いをする仙春美。怖過ぎる。
「私まだ36なのに。絶対許さないわよ」
「すいません、違うんです」
「言い訳したのでアウト!」
「言い訳なんかしません!」
仙春美が口笛を吹く。犬が一旦離れた。許してくれたかと思ったが、信じがたいセリフが…。
「何だかムカついてきたんで、じかでバター犬の刑よ」
「え?」
デブンが大きなハサミを持ってきた。
「パンティ、切らせてもらうぜ」
ほかの男が缶にハケを突っ込んで待ち構えている。
美果は怒鳴った。
「やってみなさい。魔法で全員地獄へ送るわよ!」
「ハハハ。じゃあ、お礼におまえを天国に昇らせてあげる」
よくもそういう恐ろしいことを…。
美果は唇を噛んだ。

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