《MUMEI》

.

廉はそんなわたしを見て、あー…と曖昧に声を出すと、

クルッと男の方へ向き直り、


「…俺の付き人?」


と、意味不明なことを口にした。

すかさずわたしは、なんでよッ!とその場で言い返す。


「なんで、わたしがアンタの付き人なのよッ!!」


どんだけエライんだッ!と、つっこんだ。
廉は顔をしかめる。


「ギャアギャア騒ぐな、うるさい」


「アンタのせいでしょっ!?」


喧しく言い合うわたしと廉を交互に見ながら、ダークブラウンの髪の男は、にこやかにほほ笑み、


「とりあえず、ドア閉めようか?」


廊下に声が響いてるよ、と落ち着いた抑揚で言う。

わたしはハッとして、すみませんッ!と反射的に謝りながら、バタバタと楽屋の中へ入り、慌ててドアを閉める。
落ち着きのないわたしの様子を見て、廉は、忙しいヤツだな…と呆れたようにぼやいた。


.

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫