《MUMEI》

それを見ていた克哉さんと顔を見合わせると、お互いに笑いあった。

「恋人の所に走って行ってしまったな」
「そうですね…」

くるみちゃんと出会ってまだ数ヶ月しか経っていないけど、思いがけず早い親離れになってしまった。

小さな子供の成長に立ち会えて嬉しくもあったけど、やっぱり少しだけ寂しくもあった。




克哉さんと一緒にくるみちゃんを幼稚園に送り届けた後、克哉さんはお仕事、僕はマーケットに行って買い物をしてから部屋に帰って来た。

「あー寒い寒い…」

ちょっと出てきただけなのに部屋がかなり冷え冷えになってしまっていた。

だけど僕一人なので暖房を付けずにいつものように外着のまま朝食の後片づけをすると、掃除をして洗濯物をまとめて地下のランドリー部屋に向かった。


ここは自分の部屋に洗濯機があるワケではなく、地下におかしいくらい広くて殺風景な部屋があって、真ん中に何台も白い洗濯機があった。

(いつ来てもオバケが出そうなカンジなんだよなぁ…)

まだ誰も来ていなかったので部屋の電気を付けると、あまり見慣れないドラム式の洗濯機の蓋を開け、持ってきたものを洗濯機に入れて克哉さんに教えて貰ったように洗剤を入れると洗濯機のスイッチを入れた。

(…よし、動いてる)

日本のような分かりやすいカラフルなボタンなどは無く、無機質な白にダイヤル式で文字だけが書いてあるものなので、いつもちゃんと動くのか不安になってしまう。


洗濯機がちゃんと動いているのを確認してほっとすると、部屋の隅に置かれている脚立を持ってきた。

洗濯中はヒマなので辞書とかを持ってきて勉強したりするのだけど、その前に毎日の日課になっているあの高めの窓辺のレリーフを見上げた。

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