《MUMEI》

(きっとマリア様か何かだろう…)

よく分からないけど持ってきた脚立に上ると、その綺麗な石像にお花をお供えして、きっと宗教的に様式は違うんだろうけど僕はコレしか知らないから日本スタイルで柏手をパンパンと打ってお祈りをしていた。

「オーゥ!ディフェアリー デァブルーム ヴァーズィー(まぁ、お花の妖精はあなただったのね!)」

突然、脚立に上っている時に後ろの方から何か分からないドイツ語で話しかけられた。

「えっ、わあっ///」

驚いてちょっと足を踏み外しそうになったのを立て直して、ゆっくりと声のする方向を振り返ると、壮年くらいの女性が僕を見上げながら立っていた。


「あ…あの…だ…ダンケシェーン(どうもありがとうございます)」
「イーマダンケシェーン フェアリー(美しい妖精さん、いつもありがとう)」

その女性に手を支えられて脚立から降りてお礼を言うと、手をぎゅっと握られその手を撫でられてしまっていた。

「オゥ!ズィントゥズィー アインマン?エスイストゥ ヴィディーフラウ(あら、男性なのね女性かと思ってたわ)」
「あ…僕男性ェ…って…イッヒ…マン」

やっぱりいつものように勘違いされていたみたいで、僕も慣れたカンジで返答してみた。

「マン…(男性…)ネイン マン、ズイーズイントゥ フェアリー(人間じゃなくてあなたは妖精さんよねぇ〜)」

え、ネイン?

ネインって否定型だよなぁ…。

僕を見ながら”あなたは男性じゃないわ”とか言ってるのかな…。

僕はそれにどう答えて良いか分からずに戸惑っていると、それに構わないようなカンジでその女性は洗濯を始めていた。

「オーケィ!イッヒバイス イッヒバイス、フェアリー ハトゥ カイン ゲシュレビト(いいのよ、分かってる分かってるわ、妖精さんだから性別なんて無いのよね)」
「あ…ダンケ…シェーン」

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