《MUMEI》

『OK(いいのよ)』と言われたのにホッとしてお礼を言うと、いつものようにその足下の脚立に座って本を読む体勢になった。

「ダァフイッヒ シュプレッヘン?(お話してもいいかしら?)」
「はい…ぁ…ヤ(はい)」

『ダァフイッヒ(〜してもいいか?)』は、いつもくるみちゃんが幼稚園にいる先生に「ダァフィッヒィ〜○○」と言ってるから覚えていたけど、その後の単語が分からない…。

でも、別に何をされてもいいので一応『ヤァ(はい)』と答えてみた。

僕は『ナイン(いいえ)』と言えない日本人だからね…。



「ソーショーン ヴィドゥイーネ ブルーム イーマァソー ゼァ(いつもあなたのお花を見て綺麗だと思ってたのよ)」

『シェーン』は『綺麗』で『ブルーム』は『お花』だから…。

僕がいつも飾っていたお花を綺麗だと言ってくれたのかな?

どうやら実家で華道の家元だった父親とその跡継ぎの兄がしていた生け花を、小さい頃に見よう見まねでやっていたのが役に立ったようだった。

「ダンケシェーン///」

僕にも役に立つ事はあったんだな…と思って、ひとまずお礼を言った。

そういえば『どうもありがとうございます』は、ダンケに『シェーン(綺麗)』を付けるんだなぁ…。

”綺麗なありがとう”…か。

「イッヒ ツー、ダンケ(こちらこそ、ありがとうね)」
「えっ…ぁ…あはは…///」

話を続ける事が出来ないので笑ってごまかしていたら、おばさんも同じようににっこり笑ってくれていた。


「よいしょ…っと」

洗濯も乾燥も全部終わってホワホワに暖まった洗濯物を取り出して持ってきたカゴに入れていると、ちょっとどこかに行っていたらしいおばさんが戻ってきた。

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