《MUMEI》

「エンデン ズィー?ゲーエンヴィァ ティー イム ツィマァ マーツィェン?(終わった?なら部屋でお茶をしない?)」

『ズィー/あなた』と、指をさされて。
『ティー/お茶』でティーカップで飲むようなジェスチャーをされ。
『ツィマァ/部屋で』と言っておばさんは上を指さしていた。

言葉が分からなくてもそれだけで何を言いたかったのかがなんとなく分かったので、ちょっと考えてから『ヤ、ダァフィッヒィ……?(はい、いいですか……?)』と言ったのだけど…。

『お伺いしても』という単語が出なくて悩んでいたら、おばさんはさっさと洗濯物をまとめると、僕の手を引いて階段を上がって行ってしまった。




(あれ、この部屋…隣だ…)

おばさんに手を引かれて洗濯物を持ったまま部屋に連れて行かれると、そこは僕らの部屋の、お隣さんだった。

「あっ…あの///」
「エス ヴァイス、ヴェイル イッヒ インマーズィー ザー(いつも見てたから知ってるわよ)」

こっちに来てからお隣への挨拶もしていなかったし顔も合わせる事が無かったので、お隣さんがどういう人か全然知らなかった。

隣、と言ってもこの建物の住居部分は真ん中に螺旋階段がある構造なので、それを囲むように部屋があって、壁が隣り合っているのは玄関だけだった。

なので夜の音は聞こえてない筈だけど…。

それを思い出したら顔が真っ赤になってしまった。


おばさんに手を引かれて連れてこられたその部屋に入ると、何だか変なカンジがした。

いつも右手見えているキッチンが左手にあったり、左側にあったバスルームが右側だったり…。

つまりは僕らの部屋とは左右対称の作りになっていたのだった。

僕がそんな部屋の様子をポカーンと眺めていると、おばさんはソファーを指さして腕を何だか大きく前へクルクルと回す動作をしていた。

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