《MUMEI》 魔女の作品は「それじゃあこれで失礼しますね。バンプさん今日はありがとうございました。」 バンプに頭を下げる狩月。 「こちらこそ。そういえば、彩から伝言、「ごめん〜式夜が落ち込んでて大変だから刀を見せるのはまた今度ね。何かあればどんどんテレパス送ってね〜」だそうだ。変なのに気に入られて大変だと思うが、彩に悪気は無いからできれば相手をしてやってくれ。それから、守護騎士の詰め所には自由に出入りできるように許可とってあるから遠慮なく遊びに来てくれ。ど〜せ誰か暇だしな。」 それじゃあな、と軽く手を振ってバンプは詰め所へと戻っていった。 「・・・そっか、遊んでばっかりだとすぐ破産するもんなぁ〜・・明日は適当に狩りにでも出かけてお金稼がないとな。」 宿へ戻る道中そんな事を考えながら歩いた。 宿に戻り、店主と色々と話をしながら夕食をとって、食休みをしているとジェイクが声をかけてきた。 「よ!狩月。ちょ〜っと良い物を手に入れてな、見たいか?見たいだろ?」 「オークションで、ですか?」 「そうそう、前からほしかった業物でよ!ふっふっふ・・」 ごそごそと鞄の中から一振りの剣を取り出すジェイド。 鞘から抜かれた剣は柄に緑色の宝石が埋め込まれ、そこから刀身へと数本の溝が掘られている。時折その溝に光が走る。狩月の眼から見ても高価な物であるのは見て取れた。 「彼の有名な魔導師、狂気の深淵が造ったと言われている剣、ライトウインドウだ。剣に風を纏わせてあるから軽いし、真空波が刃に宿ってるから切れ味も抜群だ。失敗作とか言われてるが・・市販の剣なんかに比べりゃ数十倍の価値はある代物だ。どうだ!すごいだろう!!」 嬉しそうに剣を眺めているジェイド。 「狂気の深淵が造ったって・・本当?」 狂気の深淵、つまりハンディングが造った、そう言われてジェイドに質問を返す。 「あぁ。狂気の深淵が造った品物は特徴的なモノばっかりでな、見ればすぐ解る。もっとも気まぐれにしか造らないらしくて数はそんなに出回ってないから・・俺みたいなレアハンターには喉から手が出るほどほしい品なんだよ。さらに!狂気の深淵は武器、特に刃物系はほとんど造らないからな、レア度5つ星。有名なモノとしては、ネスフェレス皇国の皇女ロゼの剣、それから「デュアルブレイド、シンギ」が愛用してる双剣、後は、ココの守護騎士団長の「プリオール、彩詩」の剣も狂気の深淵の作品って話だ。一回で良いから見てみたいもんだよなぁ〜・・」 (ハンドって・・すごいヒトだったんだ。) 今更のように思い、沈黙する。その沈黙をどう理解したのか、 「こいつが気に入ったみたいだな。まぁ素人が見ても良いものは良いからな!お前が一流って呼ばれるようになったら安めに売ってやっても・・いいぞ。まぁ・・元が良いから結構な額になるけどな。」 ジェイドは剣を鞘に納め鞄にしまう。 「さてと・・自慢したい奴にできたから、俺は帰るぜ!んじゃオヤスミ〜」 ヒラヒラっと手を振って宿を後にするジェイド。 (この指輪も相当高価なモノなのかも・・) 昼間にハンディングから貰った指輪。 魔力を通すことでスキルを発動させる類の物品は数多く流通している。しかし、魔力の伝達効率が低く、緊急時に大量の魔力を消費しダメージを和らげる、その程度でしかない。 想花の持っていた杖は、戦闘起動すると同時に一定のペースで持ち主から魔力を吸収し宝珠にシールドを装填していくタイプであり、こちらは比較的効率が良いとされている。しかし、戦闘開始直後は0の状態であり、一定時間経過しないとシールドは装填されないといった弱点もある。 ごまの使用している6式重装鎧は事前に魔力を籠めて、その魔力によってシールドを展開したり様々なスキルを発動させるが、その魔力を消費し尽くすと、再度籠めるには時間が必要であり、戦闘中に籠めるにはあまりに時間が掛かりすぎる。 指輪をしばらく眺めていた狩月。 (ま、いっか。) 適当に頷き、自室へと戻った。 前へ |次へ |
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