《MUMEI》

「さあ、乗れ乗れ。」
二人を後部座席に押し込む。助手席はエアバック作動済なので人気0である。

ドルンドルン

小気味いいエンジン音を響かせ、車は走り出す。慣れた手付きで国道まで出た。

「けっこう運転うまいじゃない。これなら安心ね。」
オレの運転を見てリンが感心する。人間は学ぶ生き物なのだ。

「ところで、このレバーはいつ使うんだ?今使ってもOKなのか?」
チェンジレバーの下にある謎のレバーを握る。

「! それ、サイドブレー…」

引いた。

キキー!!

テレビドラマでは良く聞くが、現実で聞く機会はあまりない派手なブレーキ音を出し車体は急激に止まった。道路にはタイヤ痕が5mほど出来た。車内は地獄絵図と化す。

「……前言撤回。よくこんな運転で死ななかったわね、加藤…。」
阿鼻叫喚のあとしみじみというリンであった。

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