《MUMEI》 演技のキス俺は彼と向かい合う。 手を握り、俺は言った。 「―お慕い申し上げます」 「ええ、私も愛していますよ」 そうして二人は熱い口付けを…。 「交わしてたまるか」 ぐいっと彼の顔を押した。 「ふぐっ!」 「まっ、客席からはそう見えるようにすれば良いか」 「えっ、でもそれじゃリアリティーに欠けない?」 「欠けて結構。誰もそこまで望んでいない」 「…それは現役演劇部員の言ってはいけないことだよ」 俺は彼の言うことを無視して、脚本に目を通した。 今度の文化祭で俺達、演劇部は戦国時代の物語を公演する。 俺が演じるのは、小国のお姫様。 彼はお姫様の敵国の息子。 二人は政略結婚で結ばれるも、二つの国は争いを始めてしまう。 それでも二人は添い遂げようとして…。 「…このラスト、本当の戦国時代だったら無しだったな」 「そうかな? 表に出ないだけで、案外アリだったかもよ?」 彼は笑いながら言った。 …演劇部の中で、1番のイケメンだと言われている彼は、だが演技の方はイマイチだと…一部から言われている。 次へ |
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