《MUMEI》

まあヒガミとかネタミとか、人にはいろいろあるからな。

男子校でも、目立つヤツはイロイロある。

彼は何かと人目を集めやすいので、今みたいに2人きりで部室で練習と言うのも珍しくは無い。

「最後は二人、手に手をとって駆け落ちってラスト、ボクは好きだけどな」

「…そうだな。まっ、観客受けはするだろうな」

「ならさ」

彼はいきなり俺の腕を掴んだ。

脚本がバサッと床に落ちる。

「やっぱりキスシーンは必要だと思うけど?」

間近に迫る爽やかイケメンフェイス。

…しかし腹は黒い。

「―貴方だけを愛しています」

そのまま顔が近付いてきて、

唇が、

重なった。

「………」

「アレ? 無反応?」

「〜〜〜っ!」

ドカッ!

「うごふっ!」

「…役者だからな。顔は止めて、腹にしといた」

「そっそれはっ、どうも…」

彼は腹を抱え、うずくまった。

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