《MUMEI》

顔が近付く気配。

思わず目を開けると…目を閉じたアイツの真剣な表情が写った。

だからだ。

…キスを許したのは。

熱くて、震えている唇を心地良く感じてしまうのは、きっとオレの体調が悪いからに違いない。

……ずっとこのままでいたいなんて思ってしまうのも、きっと……。

唇を離したアイツは目を開けて、固まった。

「あっアレ? いつ起きてた?」

「…ずっと、だ」

「えっ? …あっ、寝たフリ!?」

途端にアイツの顔が真っ赤に染まる。

「ずっズルイ!」

「何がだよ。寝ている病人に、勝手にキスする方がずるくないのか?」

「ふぐぐぐぐっ…!」

言いつまるアイツの首と頭に手を回して、引き寄せた。

「んんっ…」

…ああ、やっぱり気持ち良い。

「…えっ? なん、で…?」

「責任、取ってやるよ」

「えっ!」

「一生、オレの側にいろよ」

そう言って頬を撫でると、ボロボロ泣き出した。

「うん…、うんっ! 大好き!」

「オレも好きだ」

そうして再びキスをする。

心が浮き立つような、甘いキスを。

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