《MUMEI》
襲撃
クイナは暗い夜道を歩いていた。

すでに月は空高く浮かんでおり、周囲には人気が無い。

しかしクイナはおびえる様子はなく、真っ直ぐに帰り道を進む。

だが…。

ふと何かの気配を感じ、クイナは立ち止まった。

「…カウ」

呼ぶとクイナの影が動き、黒き犬となった。

カウは歯をむき出し、警戒した様子で目の前の闇を睨みつける。

クイナも思わず身構えた。

「―スゴイね。犬神使いになってから、そう月日は経っていないのに、もうそんなに力を身に付けたんだ」

暗闇の中から、1人の青年が出てきた。

黒づくめの服装、そしてフードの隙間から見える笑う口元。

「…あなたは?」

「う〜ん…」

青年は苦笑し、肩を竦めて見せた。

「キミを喰らうモノ、かな?」

青年がそう言うのと同時に、青年の背後の闇がいきなりクイナに襲いかかった!

しかし同時にカウも巨大化し、闇に立ち向かう。

だが闇はムチのように動き、カウの体をからめ取ってしまう。

「ぐっ…!」

形勢は不利だ。

瞬時に悟ったクイナは、ポケットから橙色の折鶴を取り出し、『気』を込めて空に放った。

折鶴は光輝き、空の向こうへ飛んでいく。

「ん…? …また姉さんの入れ知恵か。相変わらず隙の無い人だな」

闇はその間にも、カウを締め上げる。

「カウっ!」

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