《MUMEI》
見たことナイ顔
.

教室から廊下に出たとき、



剛史の姿が目に入った。



彼が楽しそうに笑いかける、その視線の先にいたのは、





−−−柏木サン。





ふたりとわたしとの間は、少し距離があったから、

なにを話していたのかは、わからなかったけれど、


仲が、良いんだな、と、思った。



柏木サンは、剛史の制服の襟を直してあげたり、

……かと思えば、からかうように、剛史の頭をグシャグシャと撫でたりしていた。


それに対して、剛史は、


時折、大声で笑い、そして、軽く柏木サンの肩を叩いたり、


今までわたしに、見せたことがないような、


すごく眩しく、明るい顔で。




………なんだ、

剛史、フツーに会話、出来るんじゃん。



別れた女と、楽しそうに。




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