《MUMEI》 . わたしはゆっくり、柏木サンの顔を、振り返って見た。 彼女は意味ありげにほほ笑んで見せると、わたしから目を逸らし、スタスタと歩いて行ってしまう。 ………つーか、 『よろしくね』って、なにそれ?? まるで、自分のモノみたいに。 余裕のあるヒトの発言じゃん。 柏木サンの後ろ姿を見つめていると、 剛史が、鼎!!と呼びかけた。 振り返ると、いつもの仏頂面と、 「帰るぞ」 いつもの素っ気ない言葉。 剛史は、わたしを促して先を歩き出す。わたしはその広い背中を目で追った。 どんどん先を歩いて行ってしまう。後ろを追いかけるわたしのことなど、気づかないみたいに。 −−−いつものこと。 なにひとつ、変わらない、日常。 . 前へ |次へ |
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