《MUMEI》

.

わたしはゆっくり、柏木サンの顔を、振り返って見た。

彼女は意味ありげにほほ笑んで見せると、わたしから目を逸らし、スタスタと歩いて行ってしまう。





………つーか、


『よろしくね』って、なにそれ??


まるで、自分のモノみたいに。


余裕のあるヒトの発言じゃん。





柏木サンの後ろ姿を見つめていると、

剛史が、鼎!!と呼びかけた。

振り返ると、いつもの仏頂面と、


「帰るぞ」


いつもの素っ気ない言葉。


剛史は、わたしを促して先を歩き出す。わたしはその広い背中を目で追った。

どんどん先を歩いて行ってしまう。後ろを追いかけるわたしのことなど、気づかないみたいに。



−−−いつものこと。

なにひとつ、変わらない、日常。



.

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫