《MUMEI》

別れ際、おばさんが抱きついてきたのにビックリしたけど、それは挨拶だという事に気が付いて、こっちもありがとうございますとお礼を言ってちょっとだけ緊張しながらも同じような挨拶をして部屋に帰った。



「”クリスマスのようせい”ってサンタさんかぁ」

畳んだ洗濯物のカゴをソファーに置くと幼稚園へくるみちゃんをお迎えに行って寒かった外から急いで帰ってきた。

「しゃむい〜!」
「すぐにお風呂に入ろうね〜寝間着とか持ってこようか」
「わかったぁ〜♪」

ソファーに置いてあった洗濯物を仕舞うついでに、気になっていたクローゼットの中のあの袋を取り出す。

結んであった袋のヒモを解いて中身を確認してみたら、やっぱりそこにはあの赤いサンタさんの衣装が入っていた。

(やっぱり…)

こっちではわざわざこんな事するんだな…。

僕はあまりクリスマスとか、西洋の方の行事はあまり知らなかったりする。

僕の家は昔ながらの旧家という事もあってかそういう慣習とかに疎くって、兄さんに聞いても『知らない…』と答えるだけだった。

小さい頃の僕が『なんで僕の家だけサンタさんが来ないの〜!』と大泣きしていたら、その年のクリスマスは枕元にはプレゼントが置かれていた。

だけど、それは辞書とか本とかばっかりで…添えられていた手紙には

『ちゃんと勉強するように  サンタより』

と、毛筆で書かれていた。

こんな事するのは父親だという事がすぐに分かって兄さんにたしなめられてからは、あまりその事に関してのワガママを言わないようになって…。

今に至る。

(こっちのお正月とかは何をするんだろうな…)

まさかおせちを作ってこたつでのんびり…ってワケも無いだろうし、ゆっくり家族で過ごすだけなのかなぁ?

(克哉さんが帰ってきたら聞いてみよう…)

そういえばさっき携帯見たら、克哉さんからメールで”ちょっとだけ遅くなる”って入っていたのを思い出した。

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