《MUMEI》

.

振り返って、その姿を見、


目を見張る。




「……剛史?」




激しく肩を上下に動かして、

息を切らせて駆け込んできた、剛史。


彼は、ナンパ男たちをギロリと睨みつけると、すかさずわたしを掴んでいる腕を乱暴に振り払う。


「俺のオンナに、なんか用?」


押し殺すような低い声で唸ると、その気迫に怯えたのか男たちは、バツが悪そうに、いそいそとわたしたちから離れて行った。


「剛史…」


未だ、彼らの背中を睨みつけている剛史に、あの…と、怖々声をかけてみると、

ジロリと、冷たい一瞥を与えられた。

かなり怒っていると、すぐわかる。


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