《MUMEI》
お言葉に甘えて
.

わたしは剛史の身体を抱きしめ返すと、大声で泣きはじめた。愛に飢えた、小さな子供のように、わんわんと、ただ泣きじゃくる。




………ありがとう、


もう、充分だよ。


ちゃんと、思ってて、くれたんだね。


ありがとう、剛史。





******





わたしが泣き止んだあと、再び沈黙が訪れた。


剛史はわたしから少し離れて、ぼんやりしている。


そんな彼氏をよそに、わたしはいつものように、さっさと服を脱ぎはじめた。

それを見て、剛史はヘンな顔をする。


「なに、脱いでんの?」


尋ねてきた剛史に、わたしは首を傾げた。


「ヤらないの?」


ここは剛史の部屋。

ふたりきりの、空間。

いつもなら、すぐエッチになだれ込む。


それが、日常。


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