《MUMEI》
衝突
がちゃ

エンジンを切り車外に出る。スタンドの敷地内は3方を壁に囲まれているためかゾンビが見当たらない。

「やあやあ、お前さん方も給油かい?昨今は原油高で困るなぁ。お兄さん、トイレットペーパー買い占めちゃうぞ☆」
オレは懐かしのオイルショックネタを絡めて先客に話しかけた。団塊の世代には鉄板のネタである。

「…………」

すべった。
それもそのはず、彼らは見たところ20代前半の男3人組で、バブルの地獄を見ていない世代だ。かく言うオレもまるでかすりもしないゆとり世代だが。

「…………」

なにやら3人で相談をしているようだ。こちらを見ながらしているところを見ると、楽しい話では無さそうだ。

「じゃあ、ガソリンもらって行こうかな。ちゃりんちゃりんっと。」
セルフ機械に金を入れる。さっきまで1500円しか無かったが、リンの貯金を使わせてもらった。

「…………」
男の一人が近付いてくる。後ろ手になにか持っているようだ。

「ケン!危ないわよ!来た!」
車の中のリンが小声で言う。もしものために、彼女は車に残した。

「いいから、動くなよ。リン。」
オレとタカは小声で話し、男を見ないようにする。

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