《MUMEI》 . わたしは返す言葉を見つけられなかった。実感が、ない。 わたしのせいで、廉が……? そんなこと、あるの?? 不意に、まえにフォトスタジオで見た、凛々しい廉の姿が脳裏に蘇ってきた。 あのときの廉は、キラキラ眩しくて、 わたしみたいな一般人とは掛け離れたところにいて、 つまり、 それが、『特別な立場』ってことだ。 黙り込んでいるわたしに、伊達さんは正面に向き直り、 深々と頭を下げる。 「今ならまだ、間に合うの。お願いだから、廉から離れて」 早口に、まくし立てる彼女。 そのつむじが、わたしの鼻先にある。 わたしは、ただ呆然と、必死に頭を下げている伊達さんを見つめるよりほかなかった。 ****** 前へ |次へ |
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