《MUMEI》

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わたしは返す言葉を見つけられなかった。実感が、ない。


わたしのせいで、廉が……?


そんなこと、あるの??


不意に、まえにフォトスタジオで見た、凛々しい廉の姿が脳裏に蘇ってきた。



あのときの廉は、キラキラ眩しくて、

わたしみたいな一般人とは掛け離れたところにいて、


つまり、


それが、『特別な立場』ってことだ。



黙り込んでいるわたしに、伊達さんは正面に向き直り、

深々と頭を下げる。


「今ならまだ、間に合うの。お願いだから、廉から離れて」


早口に、まくし立てる彼女。

そのつむじが、わたしの鼻先にある。


わたしは、ただ呆然と、必死に頭を下げている伊達さんを見つめるよりほかなかった。





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