《MUMEI》
ワンマンショー
「信じる神はあるか」

死ぬ前に祈りを。
ウェルカが尋ねた。
圧倒的な支配力。男達は腰を抜かし、平伏した。

「すごいな」

こどものようなリアシッラの感嘆に、ウェルカの頬が染まった。

事細かに指示するまでもなく、男達はぺらぺらと白状した。通信履歴のある端末機から所持金まで出し、終いには、今後ベルカ社のために全力を尽くすと誓いを立ててから、すごすごと消えた。

残ったのは、苦い顔で短刀をしまったウェルカと、満足気なリアシッラ。

「いいねそのスーツ」

初対面のときの民族衣装とは打って変わって、白いシャツに黒のベストと、秘書官らしくまとめている。

「…務めに合うよう、ミンクさんが仕立ててくださいました」

「黒髪によく似合う」

ウェルカの顔に火がついた。

「か、からかわないでください」
「正直な感想を述べたまでだよ」

黙って去ろうとするウェルカの腕を、リアシッラが掴んだ。

「ぎゃッ」

「そんなに驚かなくても」
「はな、離してくださ…」

振りほどくわけでもなく、空いている腕を震わせている。目を合わせようとせず、顔が茹蛸のよう。

「変なやつ。さっきまで4人相手に仕切ってたのに。歌舞伎役者みたいだったよ」

「そんな」

「さて、今日はウェルカのデビュー記念だ。午後は休んでパーティとしよう」

「若様っ」

「口答えは許さないよ」

笑顔で。
今度はリアシッラの独壇場。

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