《MUMEI》 ボンボヤージュ「おはよう」 早朝の社長室。 書類をまとめていたミンクが、ぎょっとして振り向いた。 「どうしたんですの」 「あ、声?」 聞きづらいほどではないが、ガラガラ。 「飲み過ぎたよ」 昨晩デビュー記念だとウェルカを招き、酒を開けた。これが意外と飲めるやつで、いつまでも崩れない。つられてリアシッラも杯を重ねてしまい、この有様。 「楽しくてさ」 「それは何より」 「この前言ってたことだけど」 「はい?」 「ミンクから、答えは言えないってやつだよ」 「あぁ、あれ」 「まずは受け入れてみることにした。その方が、気持ちいいしね。考えたって、わからないんだから仕方がない」 「そうですね」 そう決めたら、距離がぐっと縮んだ気がした。 「ただ、わからないんだよね」 「いずれ、わかりますよ」 「そうかなぁ」 さすが長く生きているだけのことはある。ミンクには頭が上がらないリアシッラだった。 前へ |次へ |
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