《MUMEI》
アグレッシブ1
ウェルカがベルカ社にやってきて、早ひと月。
始めは断固として姿を見せなかったウェルカも、たまに会議まで出席するようになった。とくに他社との会談は、警戒している。

「若様が言うのなら、社内は信用します」
そういうことらしい。

「そんなにしょっちゅう危険な目に遭う仕事はしてないよ。信用第一。得難く失い易いものだからね」

相変わらずリアシッラは多忙で、ウェルカはそれを黙って眺めて過ごす。そんな形がはまってきた頃。

事件が起きた。

鴨居電工。

ベルカ社が他社に委託している仕事を、まとめて引き受けようかと申し出てきた。あちらとしても、大きな受注となる。

実現すれば大きな経費節減だ。他のことに力を入れることもできる。
リアシッラは専門チームを組ませた。それが、ついに契約目前というところまできている。

今日は代表同士の顔合わせ。
力を入れていきたいところだが、リアシッラは気乗りしなかった。

「嫌だな、会うの」
「我慢なされませ」
「わかってはいるんだけどさ」

ミンクが鼓舞する。

「どのような方なんですか」
ウェルカが口を挟んだ。

「嫌なやつなんだ」

リアシッラに見えないように、ミンクが頷いた。

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