《MUMEI》
魔女とさる武具屋の店主
一方そのころ、リーベルの中心地から少し外れた所にある武具屋、「フェザー」では・・
「ハンディング、9分遅刻〜」
カウンターに座っている有翼人種の女性が店に入ってきたハンディングに声をかける。
「・・・・・注文した品を。」
フードを被ったまま声を出す。
「はいはい、解りましたよ〜だ。一言くらい謝罪があっても良いんじゃないの〜」
ぶつぶつ言いながら店の奥へと消えていく店主。店には剣や槍、鎧に盾などの基本装備から、術式用の装備一式、様々な魔法が施された宝珠など、かなり高価な品物まで置いてある。
壁際に置かれている剣を手に取り、鞘から抜き放つ。
鞘や柄はボロボロだが、刀身はかなりのモノ。
「ほぅ・・」
刀身を見ながら思案している間に店主が奥から幾つかの包みを持って現れた。
「ミスリル鉱石3キロ、ブラッドストーンの原石300グラム、ミセル水晶の結晶300グラム、セリエヌ山の水10キロ、それから、高位術式用呪弾255発。注文されてた品はこれで揃ってるハズだけど?」
剣を鞘に戻し、カウンターに並べられた品を見ると小さく頷く。
「適当に新品の宝珠を5つほど、それからこの剣も追加だ。」
カウンターに剣を置く。
「5つも?珍しいな。ちょっと待って、奥から取ってくる。」
再び店の奥へと消えていく店主。
「・・・やれやれ、他者との関わりなど避けていたハズであったのにな。」
呟くハンディング。声は何処か楽しげでもある。
「よっと、これで良いかい?これより上等なのは今は手元に無いから・・」
並べられた5つの宝珠。高級品、そう呼べるレベルの品である。
「・・・十分だ。」
「そ、良かった。ついでにもう一つ見てほしい品があるんだケド?」
背中に隠していたナイフを取り出す店主。
カウンターに置かれたナイフは柄も鞘も適当に造られている。普通の者ならガラクタ、そう呼ぶ物だが・・
「・・・・いいだろう、これも買い取らせてもらう。」
刀身を見ることもせずにそう答えるハンディング。
清算し、店を後にしようとしたハンディングに店主が声をかける。
「また来てよね。」
「・・・このナイフ、そなたが造ったのであろう?」
足を止め、振り返る。
「刀身も見ずに買うなんてそのうち詐欺に会うかもよ〜」
「リアム、我は冗談は苦手だ。」
そう言うと店を出るハンディング。
「また、来る。」
そう言うと、漆黒のローブは夜に紛れ去って行った。
「・・・明日は雷でも降るかな。ま、それはそれで楽しいから良いか。」
楽しげにリアムは笑い、店のドアに「閉店」と掛け、二階へと上がっていった。

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