《MUMEI》
会議
教室に戻ると凜の姿はなかった。
よく見ると、鞄もない。
他の生徒に聞くと、帰って行ったとのことだった。

「そう。津山さんは早退ね」

羽田はそう言いながら頷くしかなかった。

ふと窓の外を見る。
いつもと変わらぬ町並みがそこにある。
あの咆哮は一体なんだったのか……。

羽田の中で答えの出ない疑問が渦巻いていた。


その一日、羽田はまったく授業に集中ができなかった。
生徒から質問を受けても、何を聞かれているのかわからない。
その度に生徒に、からかわれてしまった。

なんとか一日の授業とホームルームを終えて、職員室へ戻る。

そして、いまさらに気付いた。

会議だ。

今日の騒ぎの原因を報告しろと言われていたのだった。

何も考えていなかった。
どうしよう。
……まさか、変な物が見えたからとは言えるわけもない。

その変な物であろう物を見た羽田自身、よくわかっていないのだ。

何か、うまい言い訳はないものか。

必死に考えているうちに、他の教師に呼ばれてしまった。

「会議、始まりますよ」

「あ、はい。今行きます」

羽田は考えをまとめながら、なるべくゆっくり会議室へと向かった。

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