《MUMEI》

秀皇大学で行われた練習会後から、


猪狩は毎回海南クラブの練習に参加していた。


数週間前に開かれた社会人リーグには、


残念ながら参加できない猪狩であったが、


既に来期の社会人リーグの参戦を決めた猪狩は、


それで満足していた。


いや…


猪狩は、


ハンドボールができる環境があるだけで幸せだった。












キュキュッ!!!



「おっ!!」



「くっ…」



ガシッ…



「んッ…」



ひゅッ…



「おおおッ!!」



「ナイッシューッ!!!」



























練習が終わり、


クロたちは帰りの車内にいた。


ヤマトは恭介を送り、


クロは猪狩を送る。















「調子いいね。
だいぶ戻って来たんじゃない?」



「別に…
まだまだっすよ。」



「いや〜でもさっきのは良かった。


ちょっと強引だったけどヤマが抜かれるとは思わなかった。」



「そりゃ何回もやってりゃ抜ける日もあるでしょ。」



「か・わ・い・く・ね〜!!!」



「ふん…」














バタンッ!!













車から降りる猪狩。



「…お疲れした。」



窓越しにそう言った。


自宅に向かおうとする猪狩、


しかし、



「あ〜ちょっと待って。」



クロが呼び止める。



「…何か?」



「あのさ。


お前には黙ってたんだけど、


そろそろ伝えとかなきゃなって。」



「…何すか?」

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