《MUMEI》

.

いつも、面倒に思ってた。


なんでわたしなんかに、構ってくるのか。


もっと、他のコに付き纏った方が、


アイツが望む、たくさんの言葉を、


いとも簡単に、


投げかけて貰えるはずなのに。



わたしはゆっくり足を止め、テレビ局を見上げた。

近代的でデザイン性のある、そのビルは、

どこか無機質で、冷たくて、

フツーの生活をしているわたしのことすべてを、

拒絶しているように思えた。



−−−この中に、廉がいる。



たくさんのひとたちのために、そのきれいな笑顔を振り撒いて。


その、ゴリッパな『立場』とやらを、誇りに思って。



わたしは一度、瞬いた。



………構わないよ。

廉と離れても、

わたしは、なにも変わらないし。



なに、ひとつ。



わたしは顔を背けて正面を見た。そのまま、一歩、踏み出す。

廉がいる場所とは、全く違う方へ、と。





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