《MUMEI》
逆さ吊り
デブンが立ち上がる。
「テメー顔蹴るってことは死んでもいいってことだな?」
智文は無言で睨み返す。美果も夏希も起き上がれないほどのダメージだが、智文を心配顔で見つめた。
デブンが行く。いきなり左右のパンチ連打。重い。智文も手を出すが力の差は歴然。
デブンの左右のパンチが顔面に入り、智文は目を閉じて倒れそうだ。
デブンが膝蹴りをボディに叩き込み、屈むところを首筋にエルボー!
「やめなよ!」美果が叫んだ。
デブンは聞かない。智文の腰を上から両手で抱え、高々と持ち上げた。
美果が叫んだ。
「やめて!」
しかしデブンは容赦なくパワーボム。智文は頭から落とされて失神。
「もうやめなよ、伸びてんじゃん!」
美果が止めるがデブンは上から顔面にパンチを振り下ろそうとする。美果は智文の上に乗り、両手を広げた。夏希が目を丸くする。
「やめなよ、伸びてんじゃん」
「じゃあ、おまえが代わりにいたぶられるか?」
美果は唇を噛んでデブンを下から睨む。デブンは美果を智文から放すと、背中から手を回して美果の右手首を掴む。
「あっ…」
そのまま仰向けに寝かせて体を寄せ、太い脚で美果の両脚を押さえた。
美果はもがいた。まずい。これでは両手両足を塞がれて無抵抗ではないか。
「おまえ、マジにイイ女だな」
「嬉しくない」
「俺の女になるなら許してやる」
「バカバカしい!」強気な顔で吐き捨てた。
「バカバカしい?」デブンは腹パンチ。
「あう!」
重い。美果は慌てた。
「やめろ、やめ…」
苦しい。耐えられない。悔しいけど苦悶の表情でデブンを見つめるしかなかった。
「ほら、どうする、女の子?」
「うぐ、うぐ…」
「俺の女になるか、ほら、ほらあ」
「うぐ、うぐ…」
絶対に降参できない状況にしておいて、降参するしかない強烈な腹パンチ。これぞドSだ。
降参はできないが許してもらうしかない。美果は弱気な目でデブンを見つめた。
しかしデブンはやめない。夏希が寝ながら叫んだ。
「やめて!」
やめない。美果が危ない。夏希は仙春美を見て叫んだ。
「やめさせて、お願い!」
「デブン。もういいでしょう」
デブンは攻撃を止めた。
「女の子にはもっと優しくするものよ」
美果が両手でおなかを押さえてうつ伏せになる。
「悔しい、悔しい!」
「大丈夫?」夏希は背中をさすった。
「あんたたち人間のやること、ちょっとおかしいよ」
「え、何言ってるの?」夏希は目を見開く。
仙春美が言った。
「さてと。おまえたち。三人とも素っ裸にひんむいて、逆さ吊りにしなさい」
裸で逆さ吊り。さすがの夏希も顔色が変わる。
美果は智文を揺すった。
「大変よ、司君、起きて」
「ん…」
黒覆面軍団がゆっくり迫る。
「ほほほほほ。私を本気で怒らせたらどうなるか、教えてあげましょう」
デブンが春美に聞く。
「女の子には優しくするんじゃ?」
「おまえみたいに痛い目に遭わすのは邪道よ。女の子はもっとエッチに責めないと」
「そっちのほうがきついと思うけど」
「かもねえ」
仙春美の冷笑。男たちの淫らに燃える目。今度こそ逃げ道はないか。
全裸で逆さ吊りは絶対に避けたい。美果と夏希は、冷たい汗が止まらない。

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