《MUMEI》
アグレッシブ6
「何を、いきなり」
揺れる声。

「そうでしょ。ウェルカは僕の側にいたくて、僕に仕えたんだ」

だから、会社も契約も取引先も関係ない。リアシッラが侮辱されたから、止めたのだ。
極端なことではあるが、

「単純に嬉しい」

契約とか謝罪とか、考えなければいけないことは沢山あるけれども。人に想われる暖かさが、リアシッラを包んでいた。

「…若様」

「ありがとう」
ウェルカがまた泣いた。

震える手をとって、握手。
ふたりの距離が近づいていた。

ベルカ社から申し入れ、鴨居電工との契約は白紙となった。
リアシッラはウェルカを連れて謝罪に出向いたが、同席していた秘書の進言もあってか、暴力沙汰が追及されることはなかった。

それから数日後の晩。
リアシッラはミンクにもらした。

「これでよかったのかもね。何でもかんでもうまくはいかないものだ。僕にとっての優先順位は何か、気付かされたよ」

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