《MUMEI》 「酷いよ、酷いっ!鬼だよ君達は!」 解放させると泣きながら社長は飛びついてきた。 子供のようだ。 「怖かったんですね。」 いつの間にか社長の頭をナデナデしていた。 「ふん。飽きた。」 「そうだメシだメシ!」 テーブルに向き直り食事に切り替わる。 なんて変わり身の早さだ。 浴びるように飲み食いが始まる。 「内館さんはその……リサとは……。」 社長が酔った勢いで探っている。 「リサ…………ああああいくる!はははは!」 内館は酔って勢いだけになっている。 駄目だ、会話にならない。 「内館は昔、言ってました、リサさんとは偽装結婚らしいですよ。」 七生を産むための保険だと言っていた。 確かに内館はその通りに七生を育て上げた。 しかし、リサさんは内館も愛していたと思う。 二人は秤にはかけれない別のものなのだろう。 「……リサが好きだったよ、本当に好きだったんだ。リサは俺の恋い焦がれる象徴だったんだ。」 社長が七生の父親であることは周知であったが、リサさんを好きだったのは初めて知った。 リサさんは聖母像そのままの美しい人でまるで受胎告知されたように七生を宿していた、父親は内館ではないと亡くなるまで知らなかった。 忘れたいくらいの過去だと勝手に思っていた。 前へ |次へ |
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