《MUMEI》 「そっち、大丈夫か?」 隙間から織田の姿を確認し、声をかける。 すると織田は腰を屈めてこちらを覗き込んだ。 「ああ。警備員らしき奴が来たが、近づいてはこなかった」 「そうか」 ユウゴが頷くと、織田は問うような視線を向けてきた。 「ああ、一応聞き出せたんだ。中、戻ってこいよ」 織田は無言で運転席側へ回ると乗り込んできた。 彼はちらりと後ろへ目を向けたが、何も言うことはなかった。 男に対して、どういうことをしたのか予想はついているのだろう。 いや、興味がないだけかもしれない。 ユウゴは織田に男の携帯を手渡した。 「そこにあの男の一週間のスケジュールが入力されてある」 「一週間か……。使える情報はせいぜい明日までだな」 「ああ、だな」 スケジュールはあくまで予定なのだ。 今日ユウゴたちがこの男を拉致したことで、今後の予定が変更される可能性が高い。 しかし、翌日の予定はさすがに変更しにくいだろう。 とくに、ユウゴが目をつけた講演会。 これはおそらくプロジェクトの必要性などを国民に理解させようという意図があるに違いない。 いつ来るかわからない襲撃に備えて、そう簡単にキャンセルできるとは思えない。 「俺はこの講演会がチャンスだと思う」 ユウゴが言うと織田も同じことを思ったのだろう、こくりと頷いた。 「場所、わかるか?」 「いや。だが、調べればわかる」 織田は言って車のエンジンをかけた。 前へ |次へ |
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