《MUMEI》
最悪
どれくらい歩いただろうか。
最初はきれいにゴミ一つ落ちていなかった道に、だんだんとゴミや、布きれ、瓦礫や、赤い肉の塊が転がりはじめた。
中には、炭のように黒焦げになった人の形をした何かまである。
そして、いたるところから上がっている煙。
「……やっぱり、来るんじゃなかった」
この惨状を目の当たりにしたユキナは呟いた。
「すげえな」
思わずユウゴも呟く。
頭上では相変わらず、やかましくヘリが飛んでいる。
「ったく、うるせえ」
舌打ちをして、ユウゴはヘリを睨んだ。
「あれって、カメラヘリだよね。何撮ってんだろ?」
「さあ」
言いながら、ユウゴはヘリの位置を確認した。
あの下には何があっただろうか。
そう思った瞬間、どこからか鋭い悲鳴が聞こえてきた。
「な、なに?」
怯えた様子でユキナが聞く。
悲鳴の数は一人や二人ではない。
何人もの声が、重なって聞こえてくる。
気のせいか、だんだん近づいてくるようだ。
「ねえ、ユウゴ」
ユキナはユウゴの服の裾を引っ張った。
「あー、なんつうか、まずい感じ?」
「…他の道から行こう!ね?」
「……それも、無理っぽい感じ」
そう言って、ユウゴは後ろを見た。
そこには、バラバラと悲鳴をあげながら逃げ惑う人々の姿。
そして……全身真っ黒な服に身を包んだ警備隊。
「……最悪」
ユキナの声を頷きながらユウゴは聞いた。
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