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ケータイ専用オークション

《MUMEI》
奇跡のソネット
「ちょっと待ったぁ!」
男は叫んだが、時はすでに遅かった。客の手にお釣りが渡ったのを見て、絶望が男を襲った。
もうダメだ…
男が失意にうちひしがれて地面にへたりこんだそのとき、しかし奇跡が起こった。
「あれまぁ大五郎。そげんところで何やっとるね?」
最後の最中を手にした客に声をかけられ、男は我が目を疑った。
「母ちゃん!」
「ちょうどよかばい、この荷物持ってくれんね?東京土産ば買ったとね。ばってん東京はまこと人ば多かところね」
男はこのときほど母親に感謝したことはなかった。
「こら、何ばしよっとね!」
「すまんね、こればもろうとよ」
「何言いよっとね?!こら、こん親不孝もんがぁ!」
男は最中の箱を手に取ると、一目散に彼女のもとへ向かった。

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